見えないものと見えたもの

振り返れば自分が略奪者になってました。

嘘のようなホントの話

ある休日の朝、彼から連絡が来た。



「全部バレた」



余りにも短い内容に、

なんの事か理解出来ずに返信をする。



「なにが?」



「今までのこと」



「え?どうして?」



「色々見たらしい」



「そか。それで?」



「離婚する」






·····え?離婚?!



あまりの急展開に頭がついてこない。

心臓がバクバクしている。

とりあえず今から来ると言う彼を待つ。

その間も往生際悪く動揺していた。



家に到着した彼は、

不思議な程いつもと変わらなく見えた。




さぁ、聞こう。判決の時。


(まさにこんな心境だった)




奥様は最近の彼に疑いを持ち、

交通系ICカードの履歴を調べると、

頻繁に特定の駅を利用している。



なんなのこの駅?

何があるの?

取引先?




そう聞かれた彼はあっさり不倫を認め、

多少の動揺はあった奥様も、

あっさり離婚に同意したらしい。





...そか。

なんか奥様すごいね。

まさか電車の履歴を調べるとは

すごい技だね。

ちょっと怖いね。

····いや嘘。かなり怖い。


  


急展開した現実に、

何故か私はこんな頓珍漢な感想を言っていた。

彼の日常と答え

料理が苦手な妻の用意する食事は

曜日でメニューが決まっている。

あぁ...今日は〇〇か。俺の人生はこうやって

終わっていく。それを選んだ。




勢いで結婚し、すぐに違うと感じていた。

それでも面倒臭いと過ごしてきた。

妻が望む子供を授かるべく、

指定された日に行為をする。


笑える。

これだけ子供がいて愛がない夫婦とは




たまに早く帰る日もある。

そんな日は子供と風呂にはいる。


全身で今日の出来事を伝える姿。

ケラケラ笑う声。

舌っ足らずな言葉の幼さ。



あぁ

この子達の親なんだ。

何してるんだ。




今、どうしてるんだろう。

泣いてないか。体調が良くなったか。

·····会いたい。


女々しい思いにため息が出る。



いつも通り寝かしつけで妻も寝た。

静かなリビングでスマホを見返しては

気持ちが飛ぶ。



さすがに今からは行けない。

そんな時は用もなくコンビニへ歩く。



夜風にあたりながらいつも電話をかける。

自分勝手な自分がバカらしい。

でも子供がいる。家族は壊せない。なぜ今なんだ。



こんなにハマってしまうとは。

ちょっと息抜きのつもりで、

火遊びするだけのはずが。


別れを告げよう。

なぜ振られた気分になるんだ。

自分が悪いのに。



外で長電話をしながら、

頭ではぐるぐると2人の別れに向かっていた。

自分に酔う女心

バレたら仕事を辞めないといけない。

慰謝料を請求されるかもしれない。

家族を壊すかもしれない。



あぁ早く終わろう。


近場で外も並んで歩けない。

夜中に電話もできない。


お金もない。若くもない。(これは悪口か 笑)



できないできないばかり。



でも仕方ない。これは不倫。彼には家族がある。

帰る場所がある。  



子供が悲しむから。と持ち合わせていない

罪悪感を感じている振りをしてみたり。


奥様は子育てに忙しいんだよ。と思ってもいない

事を言ってわかった振りをしてみたり。


不倫体験本を読んで悩んでいる私。と

ヒロインぶってみたり。


私も会いたい。と本音を言ってみたり。



一応、不倫も恋愛なのだ。


形は悪いし世間には許されないけど

好きな気持ちは嘘じゃない。



ただの同僚。火遊び。隙間。

それが知らぬ間に本気になっていた


女は男に抱かれると気持ちが強くなる。

そんな王道に見事に乗ってしまった。



でも、

私は自分がかわいい。


慰謝料は怖いし子供に罪はないのも理解できる。



どうしよう····

不倫じゃない相手を探そう。

寂しくないように準備しよう。

世の中半分は男だ。何とかなる。



そう思っていた矢先......。