見えないものと見えたもの

振り返れば自分が略奪者になってました。

親との対面

朦朧とする意識の中で交わした約束は、

ひと月も経たないうちに実行された。



私の親と彼が会った時

彼はまだ既婚者だった。



もちろん、

彼が既婚者であることは知らない。

いずれ離婚するのは事実だから、

その辺は省略した。



略奪婚です。子沢山です。

そう伝えても良かったけれど、

説明が面倒臭いので言わなかった。



離婚歴があること(予定だけど)。

養育費があること。

この点だけを伝え、和やかな雰囲気で過ぎた。





問題は、

私が彼の親と会う時だ。


彼の親は孫を可愛がっている。

可愛い孫から父親を奪った形の私を

どう受け入れるだろう。



今後、

孫と会う事が殆ど無くなるという現実を、

どう感じているだろう。



泥棒猫と罵られたりするだろうか。

前の奥様と比べて嫌味を言われたりして。

いきなり水をぶっ掛けられたりして。





····ちょっと待って。



自分の息子がしでかした事だ。

否定はしないけれど、

私だけが悪い訳では無い。




そんな脳内妄想とは違い、

とても温かく受け入れてくれた。

まるで初婚同士の結婚のように。



事前に彼が、

何度も親と話していたので、

詳しい事情にも触れなかった。



まぁ色々あるけど今後もよろしくね。

そんな雰囲気だった。




彼曰く、

いつも飾ってある孫の写真が

その日はかったらしい。




そんな気遣いに申し訳なく思った。





····あれから数年、

今はしっかり飾ってあるんですが....



(気遣いどこ行ったんですか?)

想定外の妊娠と鬼の即決

全面降伏の離婚手続きは奥様に任せ、

私と彼は平和に暮らしていた。

 


言葉は悪いが、全面降伏するんだ。

奥様の良いように渡すんだから、

さっさと手続きやってくれ。


そんな心境だった。




上を見たらキリがない。

下を見てもキリがない。

なんとか生活ができる。それで良い。


有り余る程のお金は無いけれど、

たまには旅行もする。

疲れたら外食だってする。

コソコソする必要も無い。



なにより、彼が居る。

おはようもおやすみも全て直接伝えられる。

不安な気持ちも彼の温もりを感じる事で

吹き飛ぶ。まさにプライスレス。





そんな中、私に妊娠がわかった。

これは本当に想定外で誤算だ。



正確に言えば妊娠確定はしていない。

初期すぎる為、胎嚢のみの確認で、

心拍は確認できなかった。


でも、手術は早い方が良い。



(書いていると鬼のようだなと思う)




もともと子供は嫌いなのだ。



私には私の生活スタイルがある。

愛せないとわかっていて産む必要は無い。



愛する人の子を産み、育てたい。という

女の本能がもともと備わっていないのだから

仕方ない。



子供は欲しいと願い、全力で愛せる人のもとに

生まれるべきだ。






手術を終え、病室で朦朧とする意識の中、

彼と親族に会う予定を立てよう。と

話したの事を今も覚えている。

お金が無い

急展開してから彼との同棲が始まった。


でも、正式に離婚するまでに

1年程の時間がかかった。



子沢山である為、単純に離婚届けを

出せばいい訳でもなく、書類の準備や

子供達が理解し慣れる充分な時間が欲しい。

そう奥様の主張があったからだ。



彼の休日は、早朝に奥様の所へ行き、

子供が寝付いたら私の所へ帰って来る。

そんな形で1年を過ごした。



離婚に際しての条件も、

全面的に奥様の希望を受け入れた。

子供との面会について、養育費や財産分与など。



奥様も必死だ。

子沢山を1人で育てるために少しでも有利にと。 



そう。

彼は丸裸状態で離婚する事となる。



離婚までの彼の生活費はもちろん全て

私が負担する。給料は全て奥様が管理し、

彼に渡されるのは2万円のみだった。


たったの2万円である。

この2万円も通勤定期を買うと無くなる金額だ。


大人が月に数百円で生きていけるわけない!

もちろん私もそう言いたいが、ここは立場的に

黙る。まぁいいやと。何とかなると自分に

言い聞かせる。



彼は良くも悪くもお金に無関心だ。

今後、長く続く養育費に対しても

奥様の希望を受け入れようとしていた。

現実としては厳しい。いや、不可能なはず。


ここは私が言わせてもらった。


全ての財産を渡すのだ。

今も生活費無しの状態なのに

それはおかしいと。


月に〇万円が限界です。



実際に無理でしょ?

家賃どうするの?

ご飯食べないの?

私と別れて1人になった時、生活できるの?


そう彼を説得し、相場より低くなった養育費。

それでも人数がいれば金額は大きい。


払い続ける事が大事でしょ?とハッパをかけた。



本音は養育費なんかクソ喰らえ!である。